第102回多言語社会研究会例会を、以下の要領にて開催いたします
皆さま、ふるってご参加ください。
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日時:2025年6月28日(土)14:00-18:00
会場:東京大学(本郷キャンパス)東洋文化研究所大会議室(3階)
https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/access/index.html
参加費:500円(オンライン・対面)
※対面参加者は会場でお支払い下さい。
※オンライン参加者は例会終了後、下記Zoom登録フォームに入力されたメールアドレス宛てに支払い方法を連絡致します。
研究会はオンライン(Zoom)でも参加頂けます。
オンラインでの参加を希望される方は、以下のフォームからお申し込み下さい。
https://hyogo-u-ac-jp.zoom.us/meeting/register/birpD9XTSYKusEfV2AUcmw
(以下、各報告の開始時間はおおよその目安ですので、若干前後する可能性もあります。)
<報告1> 14:00-16:00
発表題目:「やさしい日本語」理念の検討 ―イギリスにおけるPlain English/Easy Readの並列利用状況の参照をふまえて―
報告者:寺井悠人(神戸芸術工科大学 非常勤講師)
概要:
周知の通り「やさしい日本語」は、阪神・淡路大震災直後の社会情勢の中で、非常時における情報提供方策として考案された。以後30年が経過し、その役割や対象は広がり、その言語的特徴は変化して今日に至っている。2022年には、マイノティのためのEasy Japaneseと、マジョリティにとってのPlain Japaneseという2種類の「やさしい日本語」理念が提唱されている。
他方でイギリス政府は、マイノリティのためのEasy Readと、マジョリティにとってのPlain Englishという2種類の簡易化様式(simplification systems)を並列的に用いる方針を採っている。この点においては2種類の「やさしい日本語」理念と合致する。
2種類の「やさしい日本語」理念を普及させるための方策について検討する上では、イギリスにおける2種類の簡易化様式の並列的利用状況についての知見は有益であると考える。
本発表では、まず「やさしい日本語」30年の歴史を振り返り、次いでイギリスにおけるEasy ReadとPlain Englishという2種類の簡易化様式の特徴等について報告する。その上で、2種類の「やさしい日本語」と、イギリスにおける2種類の簡易化様式との共通点や相違点について述べる。また両国で相違が現れる社会的背景についての考察を述べる。
キーワード:マイノリティ、マジョリティ、簡易化基準
<報告2> 16:00-18:00
発表題目:タンザニアにおける多言語実践とインフォーマリティ
報告者:沓掛沙弥香(東北学院大学)
概要:
多くのアフリカ諸国では、独立後も、国民の大多数が理解しない言語が公用語として維持されており、「国民の言語」としての「国語」も擁立されていない。しかし、旧宗主国言語が存在し、且つ、言語的等質性が低いアフリカ諸国の中で、唯一、アフリカの言語を公用語とし、ほぼすべての国民が「自分たちの言語」としてその言語を認める国がタンザニアである。スワヒリ語の普及については、「殺し屋言語(killer language)」として多くの民族語を消失させるという懸念がかねてより議論されてきた。しかし、今日でも人々は「民族語」を話し続けている。本発表は、タンザニアにおける言語状況を支える要素の一つとしてインフォーマリティに注目し、タンザニア社会におけるインフォーマルな生活領域の広がりとその重要性を明らかにする。その上で、こうした生活実践の中で、多言語使用が社会的・文化的実践・戦略・共生技法として営まれていることを示す。また、政策や学術的議論においてフォーマリティとインフォーマリティの現実認識が逆転していることが、実際の言語実践を軽視し、言語政策議論を非現実的なものにしてきたことを指摘する。
キーワード:タンザニアの言語政策、インフォーマリティ、ランゲージング