第103回多言語社会研究会例会を、以下の要領にて開催いたします。
皆さま、ふるってご参加ください。
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日時:2025年10月25日(土)14:00-18:00
会場:東京大学(本郷キャンパス)東洋文化研究所 大会議室(3階)
https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/access/index.html
参加費:500円(オンライン・対面)
※対面参加者は会場でお支払いください。
※オンライン参加者は例会終了後、下記Zoom登録フォームに入力されたメールアドレス宛てに支払い方法を連絡いたします。
研究会はオンライン(Zoom)でも参加いただけます。
オンラインでの参加を希望される方は、以下のフォームからお申し込みください。
https://nihon-u-ac-jp.zoom.us/meeting/register/2jMfTIEqTsGG9y-cPrBLmw
※オンライン参加の場合、対面参加と同じ水準の経験(音声の聞きやすさ、映像の見やすさ、反応の早さなど)は保証できません。了解の上でお申し込みください。
(以下、各報告の開始時間はおおよその目安ですので、若干前後する可能性もあります。)
<報告1> 14:00-16:00
発表題目:言語商品化論をめぐる理論的変遷と今後の展望
報告者:本林響子(東京大学大学院 総合文化研究科 言語情報科学専攻 准教授)
概要:「言語の商品化」(commodification of
language)は2000年ごろから社会言語学および関連領域において注目を集めている概念である。主に観光・広告・言語教育・通翻訳・コールセンター等の産業領域を対象とし、グローバリゼーションや後期資本主義の進行という当時の文脈との関連において、言語の価値・規範・範疇化の変化がどのような形で生じているかという問題意識を軸とした多くの研究が蓄積されており(Heller 2010)、さまざまな事例を扱う研究が可能であることは『ことばと社会』19号(2017)でも示されている通りである。
言語商品化論においては、2010年代以降、研究事例が更に蓄積され、概念整理が進むともに、背景理論の多様化が顕在化してきた。本発表では、そのような動向に注目し、言語商品化論をめぐる理論的変遷とその帰結としての多様性、および今後の展望について論じたい。発表ではまず、2000年代の言語商品化論において、主としてブルデュー社会学に依拠する社会言語学研究が、後期資本主義と言語の関係性を軸としてどのように議論を展開したのかを紹介する。次に、主に2010年代以降概念の精査が進むに伴い展開された一連の理論的批判、特にマルクス主義的立場からの批判、数理経済学的立場からの批判、そして社会的アクティビズムの立場からの提言を概観し、これらの批判を経た背景理論の多様化、および「言語労働」(language work)等の派生概念について報告する。最後に、近年の動向として言語商品化論が言語と物質性に関する議論に接近しつつある動きを紹介するとともに、他領域における動向との共通点や相違点にも言及したい。
キーワード:言語商品化論、言語価値、言語規範、言語労働
<報告2> 16:00-18:00
発表題目:仲介としての「やさしい日本語」
報告者:岩田一成(聖心女子大学)
概要:発表者は、国や自治体が発行するひどい公用文(愛をこめて「悪文」と呼んでいます)を収集しています。それらを改善しようとする自治体と共同でわかりやすい日本語に書き換えています。現在公用文改革運動は、「やさしい日本語」運動と連動して進められることが多くなってきたと感じています。
本発表は仲介というキーワードから「やさしい日本語」運動の在り方を考えたいと思います。「文章をやさしく書き換えると長くなる」というコメントをよく目にしますが、効果的な「やさしい日本語」は必ずしも文章が長くはなりません。そもそも悪文と言われるものにはどういうものがあるのか、4パターンくらいに分類できると考えています。それらを概観したうえで、改善方法を紹介します。最後に、仲介との関りを論じたいと思います。
仲介という用語は『言語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠』(2001)から知られていましたが、その2020年の『随伴版』で能力記述文が示され、具体的に議論ができるようになりました。その中でも、「テクストの簡略化の方略」が文章の書き換えに関わってくると考えています。公用文改革運動などを振り返ると、専門用語を解説するような解析に注目が集まりがちですが、文章を整える潤滑化が重要であることを論じたいと思います。
キーワード:悪文、公用文改革、専門用語、解析、潤滑化