第92回多言語社会研究会例会のお知らせ

あけましておめでとうございます。

第92回多言語社会研究会例会を、オンライン(Zoom)にて開催いたします。

みなさまふるってご参加ください。

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日時:2023年1月28日(土)14:00-18:00

場所:Zoomにて開催

参加費:無料


参加を希望される方は以下のフォームからお申し込みください。

https://miyazaki-u-ac-jp.zoom.us/meeting/register/tZMvcuyvrz0vE9ZKnZE2YwWOV6uV76B5txsp


<報告1>

山口博史(徳島大学)、神原ゆうこ(北九州市立大学)

「民族混住地域における言語選好:スロヴァキア南部の地方都市を事例として」

 国境を越える人の移動に関する研究の進展にともない、移民の言語使用に関する研究の蓄積が進んできた。今回は、移民とは異なる「越境」の経験を有する「境界変動地域」(山口 2022)の住民(スロヴァキア南部コマールノ市)で行なった量的調査の結果をもとに、住民の言語選好の実情とその規定要因に関する報告を行なう。調査を実施した地域は、現スロヴァキアと現ハンガリーの間で、複数回の帰属変更を経験している。経済的にはそれほどふるわず、近隣国に職を求める人の割合も無視できない。エスニシティ構成としてはハンガリー系が約6割、スロヴァキア系が4割弱という多民族混住地域である。また、地域外からの移住者をひとつの核とした民族間結婚は25.3%とかなりの割合を占める(山口・神原 2022)。これらの地域特性を念頭に、成人子の言語選好に関する家族構成の影響、個人属性・経験、またそれらを産み出した社会的背景を考慮しながらデータを吟味しつつ、参加者との議論につなげてみたい。

文献:

山口博史 2022 「境界変動地域の社会学に向けて」『地域社会学会年報』 34:135-149.

山口博史・神原ゆうこ 2022 「スロヴァキア系とハンガリー系の民族間結婚がもたらすもの:南部スロヴァキア地域調査からの示唆」第95回日本社会学会報告資料.

キーワード:境界変動地域、民族混住、言語選好、家族構成の影響


<報告2>

太田真実(大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程)

「複数言語と「継承語」―中国につながる若者を事例に―」

 本研究は、幼少期に中国から来日した若者が自身の中国語に対してどのような意識を抱いているのかについて、その他の複数言語との関わりをもとに明らかにすることを目的とする。従来の母語・継承語教育研究では、移住先の言語との関わりで議論されることが多く、かれらが実際に触れるその他の言語についてはあまり触れられてこなかった。本研究では、調査協力者の複数言語の中の一つである中国語がその他の言語とどのように異なるのか、さらにそれぞれの言語に対してどのような感情やイメージを抱いているのかについてライフストーリーから探る。ライフストーリーで語られた内容とともに、どのように語られたのかという形式にも注意を払いつつ、韓国にルーツを持つ発表者との相互行為にも着目した分析を行う。これらを踏まえ、外国につながる人々の「継承語」をどのように捉え、眼差すことが重要なのかについて論じる。

キーワード:継承語、複数言語、ライフストーリー